演技における詳細と本質

どうも、RinDaです。

普段は、Twitter上で声優志望者の方に向けて演技向上に有益な情報を発信しております。

 

今回は「演技における詳細と本質」というテーマで記事を書いていこうと思います。

 

この記事は「読解力」についての解説になるので、

「読解力を向上させたい」
「解釈のバリエーションを増やしたい」
「プランニングをスムーズにしたい」
また「人を見る目を養いたい」

という方にオススメです。

 

目次

 

今回の参考文献

今回の参考文献は「メモの魔力 (前田裕二/幻冬舎)」です。

 

メモの魔力 -The Magic of Memos- (NewsPicks Book)

内容を要約すると、
『一つの情報(メモ)に対して「抽象化と具体化」を行い様々なアイディアが生まれる』という感じになります。

「抽象化」というのは、物事を状況や流れから切り離して考えること。
「具体化」というのは、物事に状況や流れを取り入れて考えること。

この記事では、「抽象化と具体化」を演技に取り入れた私の解釈をご紹介していきます。

 

詳細と本質

「演技における抽象化と具体化」は、それぞれ「詳細」と「本質」と言い換えられると思います。

 

例えば【キャラクター】について考えた時

 

役者はまず、「台本」や「資料」など、キャラクターに関する情報が記されたものでキャラクターを目にします。

台本や資料としては完成品ではありますが、演技においては「メモ」と言って差し支えないと思います。

 

次に、キャラクターを読解する段階で考えることはどんなことでしょう。

容姿の特徴
性格の特徴
他のキャラクターとの関係性

などがそれにあたると思いますが、こういったものはある程度、「かわいい」や「真面目」、「犬猿の仲」など抽象的な表現に言い換えることが出来ます。

これらは「キャラクターの本質」と言えると思います。

 

最後は、キャラクターを演じる段階で「具体化」を行います。

それが「芝居で表現する」ということ。
声優で言うなら「声で表現する」ということです。

それはただセリフを読むだけでも、ト書きに従うだけでもありません。

セリフとト書きに乗せて、「芝居ならではの情報」を伝える。

つまり、「キャラクターの詳細」を伝えるということになるのだと思います。

 

以上が私が「演技の抽象化と具体化」した結果です

 

まとめると

【情報】台本

 ↓(抽象化)

【本質】容姿や性格、関係性

 ↓(具体化)

【詳細】役者の芝居

 という感じになります。

 

「詳細と本質」を使った読解

では、実際に三つの例題を読解をして確認をしていきましょう。

例①「俺」

まずは単語で見てみましょう。

台本に書いてあった【情報】である「俺」の抽象化して【本質】にしていきます。

「俺」とは「男性の一人称」のことです。
「男性の一人称」は他に「ボク」や「私」などが挙げられます。
当然、英語の「 I (アイ)」も含まれます。

では「男性の一人称」を具体化して【詳細】にします。

「男性の一人称を言う」ということは「セリフを発している本人を指す」ということです。

仮に「俺」のセリフを与えられたのが「シンジ」という名前だとするなら、「シンジという意味を持つ俺という言葉を口にする芝居」がそれに当たります。

場合によっては、「指で自分を指す芝居」も該当する場合があります。

というのが一つ目の例です。

こうしてみると当たり前のことを難しく考えているだけに見えますね。

ただ、セリフの主が「女の子」だったら「ボーイッシュな女の子の一人称」という【本質】になりますし、「アメリカ人留学生」だったら「英語圏の人間が発する日本語の一人称」という【本質】になります。

「関西人」というだけでアクセントが変わる可能性がありますからね。

それは、少しの違いでかなり違うことです。

 

例②「明日は雨か……」

二つ目の例はちゃんとした「セリフ」です。

まずはセリフという【情報】を【本質】にします。

率直に考えれば「明日の天気を知った」ですね。

続いて【詳細】を考えます。

考えるのは、明日が雨である事実を知らなければならないので、「その方法が何かということ」です。

雨雲の様子を見てなら「空を見ている芝居」
天気予報を見ているなら「テレビを見ている芝居」などですね。

 

また、日本語的セオリーから言えば「憂鬱な気分」である可能性が高いので、「ため息交じりに言う」や「眉間にシワを寄せて言う」などでしょうか。

一つに絞るなら「ため息交じりに空を見て言う芝居」という感じになります。

以上が二つ目の例です。

この場合、かなり【詳細】にパターンが増えるのがわかりますね。

「雨を何で知ったのか」と「なぜネガティブな気分なのか」だけでも表現方法はかなりあると思います。

その上、①と同じようにセリフの主で解釈が違う場合もあります。
「レインコートを買ったばかりの少女」なのであれば、「お母さんから天気予報を聞いて舞い上がる芝居」に変わりますし、「強盗集団のリーダー」なら「携帯を見てニヤッと笑う芝居」に変わってしまいます。

考えれば無限に出てきますが、とりあえず異なる解釈を三つ探すようにしましょう。

 

例③「別にアンタのために作ったんじゃないんだからね」

三つめはツンデレの定番フレーズです。

まずは【本質】にしていきましょう。

先入観があるセリフですが、ニュートラルに考えると「自分の行動を相手に認知させる」という感じでしょうか。

もちろん、「言い訳する」という形にサッパリ解釈してもいい感じですね。

「アンタ」という代名詞のチョイスや語尾が「ね」であることを考えると「幼稚な言い訳」と少し具体性を上げてもいいかもしれません。 

 次に【詳細】にしていきます。

 「幼稚な」は感情の振り幅を広げることで表現が出来るので、「極端に委縮する芝居」か「極端に興奮する芝居」という感じになります。

「言い訳する」は「言葉を押し付ける芝居」や「言葉を投げ捨てる芝居」というパターンが考えられます。

一つ選ぶなら、「極端に興奮しながら言葉を押し付ける芝居」という感じでしょうか

 以上が三つ目の例です。

今回はセリフ自体に個性が表れていたので、「抽象化」した先である【本質】に具体性を持たせることができ、【本質】の時点でパターンが出来る形となりました。

もし【本質】が「嘘をつく」という解釈になっていたのであれば、【詳細】にする時に「感情の幅を狭める」という可能性が出てきます。

 

【本質】にも解釈が増えると「演技に正解はない」といわれる理由がなんとなくわかりそうですよね。

 

まとめ

演技には「抽象化と具体化」を使ったサイクルが存在する可能性がある。 

 

台本の読解法は一つではないと思います。

この方法はかなり「論理的」な方法なので、肌に合わないと思ったのであれば、別の方法を試してみるのも全然ありがと思います。

 

ただ、「メモの魔力」を読んで得られる「抽象化と具体化」の技術は、色んなものに応用できるとのことなので、覚えておいても損はないかもしれませんね。

 

ではまた。

 

RinDa