#RinDaの台本0707 総括
どうも、RinDaです。
今回は私がTwtter上で投稿している「#RinDaの台本0707」の台本の総括記事を書いていこうと思います。
【#RinDaの台本】
— RinDa@声優ネット養成所 (@RinDa_0884) 2020年7月7日
私からのコメントを希望して頂ける方は「#RinDaの台本0707」を付けてください。
今回のテーマは「記憶」です。
テーマについてはリンクをご参照下さい。https://t.co/tpfBGkeuyS pic.twitter.com/1M2nE6XubV
今回は、過去記事「「文字を読まない」ためのキーワード 」から「記憶」をテーマにした台本を用意しました。
皆さんがいかに台本を読んでいるか、出来ている方の音源を聞いて実感して頂ければいいなと思ってこのようなテーマにしました。
あまり役作りに口出しはしないようにしたんですが、やっぱり気になってしまう性分なので、ちょこちょこコメントしてしまっていますが、今回は「単語に「記憶」が入っているか」を重点的に見てきました。
「記憶」の重要性について私の考えがわからないという方がいましたら、下記の記事をご参照ください。
では、解説に移りましょう。
目次
テキストミスの謝罪
まずは謝罪から。
今回、七夕に合わせた台本ということで「夏の大三角形」を登場させています。
「夏の大三角形」というのは、天の川周辺に点在する特段光って見える恒星「ベガ・アルタイル・デネブ」の三つの星の総称です。
台本の中でも語られているように、この三つの星は七夕伝説の織姫と彦星のモチーフになっています。
台本には「こと座のベガ」「はくちょう座のアルタイル」「わし座のデネブ」と記してあります。
ですが実際は
「わし座のアルタイル」「はくちょう座のデネブ」
が正確なものとなります。
このような致命的なミスを訂正もせずに放置してしまい、申し訳ありませんでした。
私自身、投稿後にこのことに気づいたのですが、あえて放置していました。
というのも「調べれば気づくだろう」と思ったからです。
声優の仕事の中で起こしがちなミスの中に「思いこみ」というものがあります。
台本の内容の単語を自分の知識の中だけで「きっと~だろう」と解釈し、調べたりせずに現場へ行き、見当違いな表現をしてしまうことです。
扱っているものが「人の心」なので解釈違いなどはよく起こることなのですが、その台本に登場するキーワードやキーアイテムについて、リサーチせずに現場に向かうのは無謀です。
「日本刀」などの刀剣って大体1m近くの長さで重さが1.5kgくらいあるのをご存知ですか?
日本刀なんて身近にあるはずもありませんので、大体の方が調べないとこの事実を知らないと思います。
私も模造刀を持ったことがありますが、1mある1.5kgの棒の端を持って振り回すというのは、とてつもない力が必要でした。
作品上、キャラが軽々と刀を扱うシーンがありますが、それを演じる際に「刀が軽いのか」「キャラの筋力が強いのか」というのはリアリティにも役作りにも大きく影響してきます。
そう言った細かいこだわりを表現できる人間がオーディションで役を勝ち取ったりするものです。
台本中の星空も同じです。
皆さんは「夏の大三角形」と聞いてその画像をネットを使って調べたりしましたか?
台本を訂正していない方全員が調べてないとは思いませんが、その夜空を知らないのと、知っているのと、見たことあるのとでは表現に差が表れます。
今回は私のミスを利用して、このような引っ掛けを用意しました。
だまし討ちみたいで申し訳ないと思いますが、これを機会に調べるクセをつけて頂ければいいなと思います。
なにより、こういったミスを訂正しなければ、皆さんの名刺代わりとなる音声作品でテキトーなことを気づかずに演じてるバカな役者に成り下がってしまいますので気をつけましょう。
その指摘は、よっぽどのことがない限り作品の質を間違いなく向上させます。
我々はいい演技をするためではなく、いい作品を創るために仕事をしているのだと再認識しましょう。
では、台本の解説に入ります。
言葉がペラい
なんも事情を把握していないのに、分かった気になって落ち込んでいる人を励ましたり、難しい単語を使って得意げに話したり
そう言う人の言葉を「ペラい」(紙のように薄くてペラペラで中身がない)というように批難しますが
言葉に記憶がつけられていない役者もこの「ペラい」にあてはまることがあります。
もちろん、記憶を持っていなくても実感のこもった言葉にできる人間もいれば、記憶を持っていてもペラペラな言葉になってしまう人間も存在するのでイコールではありません。
今回の台本で「ペラくなる」ポイントは「星の説明」と「父の思い出」です。
星の説明
皆さんは「満天の星空」というものを実際に見たことがありますか?
この台本では、その星空を目の当たりにしていると考えられるセリフがあるので、その映像が役者自身の記憶になければ、その情景を表現するのはとても難しくなります。
もっと言うなら、皆さんはこの台本に登場する彼らが見ている星空を見たことある人は厳密には存在しないので、見たことある人でも新しく想像しなおせるといいですね。
まずその感動の経験が想像できないと「・・・きれいでしょ」が上手く言えないですね。
そして、夏の大三角形の位置関係です。
説明している時のセリフ前の感嘆詞や、語尾のニュアンスでその位置をある程度見せることができます。
「聞き手の想像力をくすぐる説明」というのがポイントですね。
一番手っ取り早いのが「演技しないこと」
「実際に見ながら電話する」に近い感覚で表現すれば、上手く見せることができるかもしれません。
そこを感覚で出来ない人は「とにかく状況も含めて丁寧に説明すること」
例えば、人間の声は「左右」を表現しにくいので代わりに「奥行き」を使って相手側にあるものを「奥」と表現し、自分側のものを「手前」と表現すれば、空に星を示せるようになります。
あとは、「たくさんある星の中から一つの星を指す」という曖昧さや、星の果てしないほどの遠さを表現できれば、ある程度みせられるはずです。
上手く表現できるとこんなこんな感じです
☆B
--------------------
天の川
☆D
--------------------
☆A
上手く表現できてない方の夏の大三角形はこうでした。
△ ・ ・ ・ ■
↑ D A B ↑
夏の大三角形 ↑
天の川
謎の直列現象が生まれていました。
さらにちゃんと表現できると
こうなります。
確かに、そこに三点の星があることを示せば、台本は成立しますが、宇宙の遠さと星の多さをその中で表現できた時の「凄み」がある音源というのは一味も二味も違います。
何より、三つ目の空を表現できる人間は、一つ目も二つ目も表現できます。
一つでも多くの表現を身に付けて、どんなリクエストにも応えられれば、それが理想的ですよね?
そのためにもリサーチは欠かさないようにしましょう。
もちろん、想像することも。
父との思い出
皆さんは小さかった頃に父親と一緒にお出かけした記憶はありますか?
もし、いろんな事情でその記憶がない方は、それを想像したり、他人に取材したりしなければなりません。
記憶のある方も「平日の仕事帰りに車を二時間運転してでも自分の子どもと星を見に出かけるような父親」がいたとは限らないと思いますので、出来ればそれに近しい友人を探して取材するといいですね。
もし想像するなら、「自分と親しかった知り合いの大人の男性が、突然星を見に連れ出された」と想像してみましょう。
この記憶があれば、思い出話に深みが出ます。
例えば「アウトドア好きな父親」で「インドア派の子ども」ならちょっとうんざりしたように語るし、趣味が合っているなら全体的に楽しそうに語りますよね。
また、「仲の悪い親子」なのであれば、少し神妙な雰囲気になるかもしれませんよね?
こうした父親の記憶がちゃんとあるかないかでセリフの言い方やリアリティが変わってきます。
まとめ
- リサーチは必ずしよう
- リアリティが重要
- 経験がなければ想像する
- 経験があっても想像する
- 取材して想像してもいい
- 記憶は深みを出す
今回の台本は設定をつけていなかったので、皆さん自由に演技ができたと思っていらっしゃるかもしれませんが
こうして考えてみると、そんなに自由には演じられないことがわかると思います。
セリフには必ず意味もあるし、役割もあります。
星がちゃんと見えて説明出来ていれば、父の記憶がより美しいものになる。
父の記憶があれば「思い出の場所なんだ」をより深くすることができます。
なんなら、この父の話は「思い出の場所なんだ」をより趣深く聞かせるための布石でしかないともいえるし
「思い出の場所なんだ」すらも「君をここに連れ来たかったんだ」の布石であるとも言えます。
そして、「君をここに連れ来たかったんだ」は星の説明をする布石です。
セリフ同士はお互いに影響しあっています。
セリフは正しく組み立てれば、その印象を何倍にもすることができる。
なので、セリフを使って誰よりも強い印象を与えられる声優になりましょう。
RinDa